映画原人の穴

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【映画】「ホース・ソルジャー」―日常=平和なんて思っているのは日本人だけ!?―

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おすすめ

 戦争映画は数多い。それは戦争ひとつひとつが無数のドラマを内包しているからだ。
 今回の「ホース・ソルジャー」達の物語はすこぶるドラマチックであるわけだが、長い間機密扱いとなっていた。
 戦争ドラマの金脈はまだまだ氷山の一角というわけだ。機密の公開を求める声が多いのもよく分かるというわけだ。

 
あらすじ

 2001年911発生直後。アメリカはすぐさまタリバンへの反撃を計画する。その任務は反タリバン組織「北部同盟」の一派、ドストム将軍を援護し重要拠点マザーリシャリーフを奪還することだった。
 そして、その任務を任されたのは僅か12人の兵士たちだった。


感想
 
  ジェリー・ブラッカイマー製作の映画であることが大々的に宣伝されている。さらに監督を務めるニコライ・フルシーはもともとCMディレクターとして活躍していた人物である。
 そうなると、マイケル・ベイの一連の作品であったり、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの様なド派手なエンタメ作品。または、「ブラックホーク・ダウン」の様に終始ドンパチを繰り広げる戦争映画を思ってしまう。
 それらの要素はこの映画にもしっかりとある。兵士たちの(アホ中学生の様な)コミカルシーンや、迫力ある戦闘シーン。しかし、それだけではない。この映画には「外国へ戦争しに行く」とはどんな事・体験なのかを示す力があった。

 つまり、自分達の常識が通用しない世界で、自分達とは全く違う理屈・道理で動く人間を相手にすることの恐怖だ。

 しかも太平洋戦争の日本人のように敵としてだけでなく、仲間として寝食を共にしなければならない。寝首をかかれてもおかしくはないのだ。

 ”国際関係で、戦争と戦争との間の騙し合いの期間”とはビアスという人が「悪魔の辞典」という本で示した「平和」の正体であるが、ギリギリの均衡で物理的な衝突が抑えられているのは事実だ。
 911の二日前に「北部同盟」を実質まとめていたマスードが暗殺された。そこから北部同盟はドストム等の各軍閥に分かれ、タリバンとは戦うが他の軍閥ともいがみ合う事となったのだ。

 そもそも北部同盟は違う部族の寄り合い所帯と言っていい集合体であり、マスードというカリスマによってまとまっていたのは、その歴史の中で”瞬間”でしかなかったともいえる。
 中東情勢は絶え間ない衝突と緊張で彩られており、今まで平和な時期があったのかどうかもわからなくなってしまったが、それは今もまだ戦国時代ということだ。
 我々は織田信長とか三国志が大好きであるが、国盗り合戦のリアルとはジハード戦争であり、ISISだったのだ。
 ISISは世界中に国盗り合戦の同志を生み出したという事だ。

 そんな合戦は今もまだ続いているが、アメリカ軍が「イラク戦争」として乗り込む前哨戦となったのが、この「マザーリシャリーフ奪還作戦」だ。
 中東でのアメリカ軍と言えば、空爆というイメージがある。それこそ空から馬乗りになってボコボコにしていると思っていたが、それをするには地上要員が接近し、照準を誘導しなければいけないのだ。
 
 ホース・ソルジャーの任務はズバリその誘導係であり、空爆で敵戦力を減らすことでドストム軍の殲滅戦を援護するのだ。

 そんなわけでアメリカは大軍でタリバンを粉砕するのではなく、北部同盟が共倒れするのを防ぐ杖のような役割を担うというわけだ。しかし、国盗り合戦では絶対の仲間など存在しない。そこではアメリカもまた合戦に参加する”一部族”に過ぎないのだ。「今日の仲間は明日の敵」ということだ。


 この映画は、この作戦の成功によって得た功績を誇らしく語る。劇中でも言葉もロクに通じず、協力関係であるのに互いをまったく理解・信用していなかった人々が徐々に手を取り合い、勝利を掴むさまを見事に描いている。

 しかし、実際の歴史において、つまり今日に至るまでこの中東情勢が世界でどう機能し、事を起こしてきたか……今更ここで書き起こす必要もないだろう。

 戦争ひとつに無数のドラマがある……、それは良いことも悪いことも含めてだ。そしてそれは人生にも言えることだ。戦争を日常に生きる人にとってこの映画は1日の日記で「今日は作戦が成功しました」と書いて事足りるかもしれない。
 しかし、戦争が日常ではない日本人にとってはそれは途方もなく驚愕でドラマチックなものだ。

 日本では様々な職業の日常が漫画などで描かれ人気を博している。アメリカでは近所で戦争することはないものの、戦争自体は身近なものだ。自分の夫や息子・近所の人が兵士としてどんな日常を送っているのか気になるのは当然だ。

 そう考えると、日本では自衛隊を描いた作品をほとんど見ない事に気付く。「戦国自衛隊」「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」という作品があるにはあるが、どちらも設定が完全にファンタジーであり、「自衛隊」が戦争することについて日本人がどれだけそれを認識できないかを改めて思わせる。
 そうなると今のところ一番自衛隊の活躍を描いているのは「シン・ゴジラ」であり、「対災害」のための自衛隊というのが日本人にとっての自衛隊という事になる。
 しかし、自衛隊が身近な職業であるかというとまだ微妙であり、「機動警察パトレイバー2 the Movie」の東京にやってきた自衛隊を横目で見てみぬふりをする人々、というのが基本的な自衛隊に対する接し方だ。もう少し自衛隊について知っておいた方が良いかもしれない。

 

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