映画原人の穴

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【映画】「15時17分、パリ行き」―普通の人は何気なく凄いもの―

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概要

 実際に起こった鉄道内での銃撃テロ事件(タリス銃乱射事件)を描いたノンフィクション。どれ程ノンフィクションかというと…なんと主演の3人は実際の事件の当事者、つまりご本人様である。
 普通の人々が主役となるこの映画は、それを鑑賞した普通の人々に色々な”気付き”を与えてくれる。今の自分に自信がない人はぜひ観てみるべき!

 


あらすじ

 スペンサー・アンソニー・アレックの幼馴染三人組はヨーロッパ旅行を満喫していた。

 しかし、パリ行きの列車に乗っている際にテロと遭遇してしまう……

 

感想

 偶然乗車した電車内に暴漢が現れ、皆が恐怖に固まる中、持ち前のスキルを駆使して見事制圧を完了させる……そんな中二病の妄想的シチュエーションを見事に完遂させたのが、この映画の基となった事件だ。

 3人は特別何かに秀でているわけではない。スペンサーとアレックは学校ではトラブルをたびたび起こし、母親たちはそれの原因を母子家庭だからだと当て込む教師たちに罵倒を浴びせるが、それ以上に何かするわけではない。
 とはいえ二人はミリオタの堅い友情に結ばれており、そこに口の上手いアンソニーが仲間として加わる。友情によって3人はずっとつるみ続けることとなる。

 子育ての重要性が叫ばれ、親が子供にどう接するか・教育するかの本があふれているが、実を言うと親子の関係より、友人関係の方がずっと成長に影響するというのだ。
 3人の行いは大人達には理解されていなかったが、3人の中ではそれぞれが理解され、尊重されていた。だからこそ、3人とも自分の個性を失わずに立派に大人に成長したのだ。

 デブ時代のスペンサーが軍隊に入ることをアンソニーに言った際、アンソニーは「そんなデブじゃ入れるわけがない」と言った。その一言がスペンサーの闘争心に火をつけ体作りを始めて、見事軍隊に入隊する。
 大人から否定されるのと、友人から否定されるのとではワケが違う。友人の否定は云わば発破である。無様な現状を爆破して再構築するダイナマイトだ。

 そんなわけでこの映画はかなりの長尺を幼少時代の3人に充てている。アニメだと普通の一般人と言いつつ隠されたスゴイ過去が主人公にあったりするが、本当に一般人だ。
 
 そんな一般人を映画の主役に抜擢して、自分自身を演じさせたこの映画は、それだけで話題になったが、実際に観てみると全く違和感がないことにも驚く。
 それはどの場面の彼らを描くかの選択が非常に上手くいっていたからだ。初の欧州旅行や軍隊生活といった不安が付きまとう舞台が、彼らの演技に対する不安とうまくマッチしていたのかもしれない。
 また、編集も彼らの演技を見事にサポートしている。ともかく描写の省き方がスゴイし、伏線というかシーンの繋げ方がやはり熟練だ。クラブシーンが3人そろった2度目で初めて描く、それだけでなんというかとても良い。

 
 彼らは旅行疲れなど様々な負の要因があるなか、どうして彼らはテロリストに果敢に立ち向かうことが出来たのか。
 それは危機的状況への対応をしっかりと訓練していたからだ。人を助けるために軍隊に入った彼らは、対応力と皆を守るために捨て身で戦う覚悟が身についていた。さらに3人はそれぞれを理解し、信頼し合っていた。3人はすぐさまそれぞれができる最大限の行動をとって事態の対処に当たった。

 映画を観た人にはあの人はそんなに活躍していないのになんでヒーローみたいになってるの?なんて”なでしこジャパン全員国民栄誉賞”の時みたいに思う人もいるかもしれないが、そんな話ではないことは事件が起こるまでの彼らの関係性を見ればわかることだろう。 


 クリント・イーストウッドの「アメリカンスナイパー」は好戦的・殺人賛美などの議論が起こったが、今回の「15:17」こそ軍隊賛美で凄まじい募兵プロパガンダだ。何故なら軍隊に入れば、中二病患者が夢見るハイパースキルを手に入れられることを証明したからだ!

 

 

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