映画原人の穴

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【映画】「エクソシスト ディレクターズカット版」―端整な映画―

エクソシスト ディレクターズカット版 (字幕版)

概要

 エクソシストは悪魔祓いのことであり、それを描いた映画は数多い。この映画はまさしくエクソシスト映画、いやオカルト映画の代表作であり、映画に影響を受け本当に悪魔憑きが発生に至るほど世界中にショックを与えた。

 


あらすじ

 イラクで遺跡調査をしていたメリン神父(マックス・フォン・シドー)は、不穏な予兆に遭遇する。
 その頃アメリカでは映画スターの娘リーガン(リンダ・ブレア)の行動が次第に気が触れたようになっていた……


感想

 怖いかどうかはともかくとしてこの映画が非常に巧みであり、面白いのは確かだ。物語はイラクから始まり、そこでメリン神父が悪霊像を発見するまでの色鮮やかでありながら不穏な空気感。そしてそこから静かにゆっくりとアメリカ、ジョージタウンに舞台が移る。最近の映画だと場所や時が変わる際に派手な空撮とやかましい音楽で演出することが多い(例:ワイルドスピード、でもそれが魅力でもある)が、「エクソシスト」にそういった転調はない。

 徐々に不可解が深まり、謎が拡大し(そして明らかになる)ていくさまが自然に、現実を記録していくように紡がれていくのだ。それが恐ろしい物語ながらもその続きが気になって仕方なくなる様に作用していく。
 それは登場人物の悩みも同様であり、実際に悪魔憑きになるリーガンだけでなく、皆がそれぞれ悩みを抱えており、それが物語中それぞれに進行していく。それらの悩みは皆現実に起こり得るもので非常に迫真に迫っている。大人たちはそれを上手く発散したり隠すことができるが、子供のリーガンにはそれができず、それが悪魔憑きとして爆発するのだ。

 それはつまりこの映画を観た者は自分の実生活を思わずには居られなくなるのではないか。自分の事、親の事、子供の事、知人・親友の事……気になる事柄は沢山ある。だけど普段は日常に押しやられるそれらの不安が映画を観たことで一気に押し寄せ、それが恐怖となるのだ。

 この映画を観たことで「エクソシスト騒動」をおこした人もいたらしい(勿論デタラメだった)が、それは現実の不安をすべて悪魔の所為にして除霊すれば元通りになるはずだと考えたに過ぎない行為であり、今も普通に教会や神社、寺で行われる神頼みと大差ない。
 また、映画では科学医療もまた不気味なものとして描かれる。特にリーガンのレントゲン撮影の下りは黒魔術の様に恐ろしいものだ。

 人は、不思議なものだが自分に不調を感じた時、より大病である方が納得がいくのだという。『それ程おおきい病なら、これぐらい苦しんだのも当然』と思うのだ。逆に予想よりたいした病ではないと『そんな事はない!こんなに苦しいのに!』と本当に余計に苦しくなり、病状が悪化するという。
 現在は公開当時よりも科学医療が発達し、そして最新医療をうけられる人々の範囲も広がった。だから今これを観ても当時ほどの恐怖を感じることはないかもしれない。

 だが、科学が進歩するにつれ科学の限界も現れ始めたら……実際、精神の世界は科学医療の範疇では捉えきれなくなり、宗教的な祈りや瞑想の方が効果的と言われるまでになった……、その時はエクソシストが再び現実的になるかもしれない。

 

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