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【映画】「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」―移ろいゆく街のにおい―

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概要

 バブルが崩壊したとて日本は世界有数の経済大国であることには変わりがない。至る所で綻びが露わになった日本を舞台にチャイニーズマフィアが暗躍する。
 やはり当時の新宿、歌舞伎町は素晴らしく絵になる。人間の欲望で構築されたその街は、生きている人間を描いた作品を撮るには最も適したキャンバスだ。

 


あらすじ

 桐谷龍仁(椎名桔平)は中国残留孤児二世の刑事であり、新宿で急成長を遂げる中国マフィア「龍爪」の捜査をおこなっていた。
 ところが取り調べた参考人を帰す際、引き取りにやってきた弁護士が弟の義仁(井筒森介)であったことを知り、龍爪のリーダー王志明(田口トモロヲ)を追うのと同時に義仁を黒社会から引き離す事にも奔走することに……


感想


 みかじめ料をとることしか頭にない日本人。自分で考え、自分で動くことを忘れ、人の財布ばかり見ている奴らは何時しか足元をすくわれてしまう。この映画に出てくる日本ヤクザ、山根組は大体そんな描かれ方だ。昔からそこにいたという事だけが取り柄で、それ以上のことは全くせずに昔からの環境に甘えているのだ。ハングリー精神のかけらもない。

 それとは対照的にチャイナマフィアは稼いでのし上がってやる、という向上心に満ちている(迷惑な話だ)。どっちに勢いがあるかは明白だし、それは勝敗に直結する。田口トモロヲ演じる龍爪のリーダー、王は筋金入りのアウトサイダーで全裸コートも容易く着こなしており、それを使った不意打ちも見事な男である。

 そして主役の桐谷龍仁は日本人でも中国人でもない「中国残留孤児二世」である。後の「DEAD OR ALIVE 犯罪者」での竹内力も同じ設定であったが、三池崇史はこういった社会から隔絶されたアウトサイダー達を描くことが多い。
 龍仁は残留孤児二世の刑事であるが、その弟である義仁はマフィアの方に行ってしまった。弟が心配で仕方ない龍仁は何としてでもマフィアから引き離そうとする。

 この兄弟はどちらも黒社会に片足ツッコんだようなものだがその後ろには何の変哲もない平凡な家族がバックにある。それが一気に現実味を増してくるのだ。龍仁の家族の身を案じる愛情深い側面や、義仁の家族に迷惑をかけずに一人で生きていこうとする側面。どちらも現実として伝わってくるのだ。
 また、歌舞伎町は勿論、台湾で行われたロケも世界の構築に大きな役割を果たしている。どちらもその当時の本物の空気感を持ち込んでおり(少なくともそう感じる)、映画の物語がまるで現実化の様な感覚を味わうのだ。

 同じころに制作された石井隆「GONIN」もまた歌舞伎町を舞台とした優れた映画だが(椎名桔平も出ている)、歌舞伎町の描き方は全く異なる。「新宿黒社会」では三池崇史たちが直に街に乗り込んでありのままを撮ったように感じるが、「GONIN」は石井隆の主観で組みなおしたセットの様な歌舞伎町だ。どちらも別の味わいがあるので見比べてみると面白い。
 あと、どちらの作品でも共通しているのが他にもあり、妙にホモ臭いところだ。というか、邦画の面白い映画は大抵ホモ臭いのは何故なのか。湿度の高さが男を匂い立たせてしまうのか。

 とにかく当時の歌舞伎町の毒気にあてられたいのなら是非ともこの「新宿黒社会」を観てみて欲しい。登場する人間たちは時に非現実的に過剰であるが、常に現実に肉薄しているように感じられるのだ。

 

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