映画原人の穴

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【映画】「マイノリティ・リポート」―完璧な安心など、ない!―

マイノリティ・リポート (字幕版)

 

あらすじ

 2054年、アメリカの首都ワシントンD.C.では「プリコグ」と呼ばれる予知能力者を利用した殺人予知システムにより殺人発生率は0%となっていた。
 そのシステムを運用する犯罪予防局のチーフ、ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)は過去のある事件をきっかけに未来殺人の取り締まりにのめりこんでいたのだが、ある日自身が殺人を犯す予知がなされ、追われる身となってしまう。
 ジョンは真相を探るために奔走するが……

 


おすすめ

 フィリップ・K・ディックの原作をもとに監督スティーヴン・スピルバーグ、主演トム・クルーズで映画化したSF作品。2000年代はスピルバーグがSF作品を連発しており、この前年には主演ハ―レイ・ジョエル・オスメントで「A.I.」、2005年には「宇宙戦争」トム・クルーズを再び起用してリメイクしている。
 その中でこの「マイノリティ・リポート」はSF的な予見と、アクションなどの娯楽性が特にうまく入れ込まれた一級品と言える。最近話題のアレとも通じるテーマだ!


感想

 2017年6月3日、21時からのフジテレビ土曜プレミアムでこの「マイノリティ・リポート」が放映された。洋画日照りの著しい最近の地上波において珍しいものだと思ったが、「テロ等準備罪」への当てつけであろうことは明らかだ。
 でもまあ、映画原理主義者の私にしてみれば、現実のいざこざのおかげで過去の名作があらためてゴールデンタイムに流されたという事が単純にうれしい。これからは時事問題に絡めた映画を毎週やってほしいねぇ。

 テロ等準備罪で皆が恐れているのは普段の行動がテロの準備をしていた、とこじつけられてしまう事だ。つまり「ザ・シューター/極大射程」のボブ・リー・スワガーの様な状況だ。
 対して今回の殺人予知というのは3人の能力者が現実におこるであろう未来の殺人事件を夢見ることで、ジョン達が事件発生までに現場に急行し事前に加害者をとっ捕まえるのだ。

 つまりプリコグは計画やら思惑ではなく、「事実」を夢見る。であるから司法省や民進党が危惧する冤罪は起こらないという理屈が完璧なシステムの前提となっているのだ。しかし、それを扱っているジョンの殺人が予知されてしまう。そのとき彼は初めてシステムの欠陥を疑い始めるのだ。

 起きていない犯罪を処罰するためにはその予測が100%正しくなければならない。劇中のワシントンD.C.では殺人事件の発生が0%であるが冤罪が0%であると言えるのか?
 0%でないならこのシステムを停止するか?そうしたら冤罪はなくなるかもしれないが、殺人事件はまた起こり始めるだろう。つまりこれは「人命と人権」を天秤にかける議論となる。

 しかしこの映画はスピルバーグによる一級のエンタメ作品だ。その様な問題を抜きにしても十分面白い。序盤の降下から始める取り締まりのシーンは迫力があり、嘔吐棒やすごい吹っ飛ぶ銃といった近未来的なデバイスも面白い。スピード感とスリル溢れる追跡劇は達人芸だ。

 キャストもいい。トム・クルーズを追うことになる元同僚フレッチャーを演じる二ール・マクドノーはスピルバーグが手掛けた傑作戦争テレビドラマ「バンド・オブ・ブラザース」の主要キャラクター、バック中尉を演じている。また、トム・クルーズの嫁、ララを演じるキャスリン・モリスはテレビドラマ「コールドケース 迷宮事件簿」の主役リリーで知られる。

 司法省の捜査官ウィットワーはおなじみコリン・ファレルが演じ、犯罪予防局局長らマーを演じるのは「エクソシスト」の神父で知られるマックス・フォン・シドーだ。また、カメオ出演キャメロン・ディアスなども出ている。


 網膜認証が普及した未来描写も面白い。街にあふれる広告には網膜認証カメラがついていて、通行人一人一人にあわせたメッセージを個別に送ってくるのだ。現実でも検索や閲覧履歴をもとにしたその人に会った広告を展開しているが将来はもっとうざいことになるかもしれないということだ。
 
 映画に社会批判などを求める人にも、単純に楽しみたい人にもどちらの欲求も満たす優れた作品だ。要チェック!