映画原人の穴

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【映画】「ヒストリー・オブ・バイオレンス」―ただの暴力映画ではない!―

ヒストリー・オブ・バイオレンス [DVD]

 

あらすじ

 トム・ストール(ヴィゴ・モーテンセン)は妻エディ(マリア・ベロ)と高校生の息子ジャック(アシュトン・ホームズ)、幼児の娘サラ(ハイディ・ヘイズ)と共に田舎町で平和に過ごしていた。
 ある日、トムが経営する店に二人組の強盗がやってくるが、トムの鮮やかな立ち回りで撃退、一躍町のヒーローとなった。
 しかし、その後トム一家を怪しい連中がつけて回るようになる。そこから一家の穏やかな日常は徐々に歪になっていく……

 


おすすめ

 デヴィッド・クローネンバーグ監督作。原作はグラフィック・ノベルである。寡黙で優しい父親の、消していたはずの過去に家族が翻弄されていく様を丹念に執拗に描いていく。殺伐としながらも途切れない家族の絆に注目!


感想

 英語では「history of violence」という言葉は「暴力事件を起こした過去がある」という言い回しがあるそうだ。その言葉の通り、主人公トムの過去は暴力であった。
 「ファイナル・デスティネーション」という映画は「死」の運命からは逃れられない、という話であったが、今回は過去の「暴力」からは逃れられない、という話だ。

 小さな田舎町で小さなダイナーを経営するトムは華やかではないが、平和で幸福な日々を過ごしていた。しかし、店に強盗が入ってきたことで事態は変わる。その日からトムは新聞やテレビでばんばんと報道されるようになり、見つかりたくない奴らに見つかってしまうのだ。

 映画では主人公が元ワルなため、観客はそちら側に感情移入するが、普段の実生活ではワルに痛めつけられる人の方が多いはずだ。確かに主人公の現在はとっても誠実で周りの人から愛されている。だからと言って、過去の罪は清算したことのしていいのか?

 ヒストリーオブバイオレンスは個人の内面の出来事ではない。彼に傷つけられ人生を台無しにされたり、そもそも終わらせられてしまった人は沢山いるはずだ。いくら真っ当な生き方をしていたってその罪を拭い去るほどではないだろう。
 本作の暴力描写は非常に生々しく、いくら洗ったって完璧に元に戻ることはないような執拗さがあるが、暴力の本質とはそれだ。こびりついて消えることはない。

 私は日常において、さんざん暴力沙汰を起こした(であろう)元ヤンがテレビに出て活躍している事に対して、「よくそんなのうのうとやってんな!」と思うが、その本人はそのヒストリー・オブ・バイオレンスについてどれ程考えているのだろうか、と思う。今回の主人公の様に悩んでいるのだろうか。それともただの武勇伝として笑いネタにしているのだろうか。
 どんな人にでも過去を掘り返されて中傷や嘲笑を浴びる危険性はある。もしそうなった時に出来るのはただ一つ、それに対して真摯な対応をとるほかない。それでもケガはするだろうが、下手に避けようとするよりはよっぽどいい。

 この映画の良い所は、その様な主張を口に出して言うのではなく、映画的に映像と音響で見事に伝えてきているところだ。主人公トムは寡黙だが、行動が嗜好の変化を的確に表現しており、過去を何とか隠そうとする前編とそれがどうしようもなくなる後編が見事に対比となっている。ズシリと響く銃声と肉体がひきちぎれる様な破壊描写、忍び寄る過去の陰……としてのエド・ハリス。家庭状況を直接反映したようなセックス。全ての描写が必要と思えるのだ。
 
 映画とテレビドラマの違いはドラマはながら見出来るが、映画は出来ないという事だ。映像の力を思い知らされる傑作だ!

 

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