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映画原人の穴

映画を中心とした感想ブログです。ネタバレなしです!

【映画】「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル」―社会を開放するのは純真な心?―

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル

 

あらすじ

 野原一家やかすかべ防衛隊の家族たちは豪華客船ツアーに参加していた。
 それは「アクション仮面」の新作映画の完成記念で企画されたもので、アクション仮面を演じる郷剛太郎と共に映画鑑賞するプログラムにあったのだが、上映中に大量の猿が乱入し郷剛太郎をはじめ、大人たちは近くの島に連行されてしまった。
 客船の中は子供たちだけになり、何もできない状態に陥ったが、かすかべ防衛隊の5人は大人たちを救出するため、ジェットスキーで島に向かう。

 


おすすめ

 20世紀最後の作品。いなくなった大人たちを救出するという設定は次作の「オトナ帝国」にも受け継がれている。アクション仮面しんのすけ共闘や、健気に頑張るひまわりなど、野原兄妹の活躍が目立つ一本。


感想

 2000年という事で、ミレニアム。あれから既に17年もたった。当時の記憶は今や曖昧だが、もう生きている間にミレニアムがやってこないとなると少し寂しい。
 本作の始まりはアクション仮面豪華客船ツアーに参加するところから始まる。所詮はテレビシリーズの劇場版に対して豪華すぎるイベントだな、とも思うが時代はミレニアムで世界中お祭り騒ぎだからそんなモンなのだ。

 身分不相応(と思われる)の船旅に参加できたのは、団体割があったからであり、かすかべ防衛隊は全員乗船している。ところでシロは犬だけど特に何の問題もなく入れてもらえたのだろうか?
 楽しい船旅のはずだったのだが、何時の間にか侵入していたサル部隊によって大人たちが連れ去られてしまうのだ。

 「吼えろ!ドラゴン」に合わせて登場するラスボス・パラダイスキングは実力ある男であり一人で凶暴な猿軍団を屈服させて従えているが、しょせん猿は猿であり、できることには限界がある。
 そこで近くを通りかかった巨大客船に乗っていた大人たちを労働資源として一挙に捕獲してしまったのだ。


Carl Douglas - Kung fu fighting(original)

 そんな事態をかすかべ防衛隊が黙っているはずもなく、5人で島へ突入する……だけでなく、船で留守番することになっていたはずのひまわりとシロまで島へ行ってしまう。
 なんとか合流に成功するが、途端にしんのすけ兄妹以外の皆がサルにつかまってしまう、しかしここから二人の活躍が幕を開ける……。

 本作は「主人公はしんのすけ」という点を改めて強調して作られたという。たしかに前作「爆発!温泉わくわく大決戦」はその点が曖昧になっていたかもしれない。確固とした主人公がいれば、物語が安定してくるのだろう、本作は物語の起承転結が前作と比べると分かりやすくなっているし、メリハリが利いているのだ。

 大人たちは奴隷労働を強いられ、子供は船に置いてけぼり……あれ、これは現実を風刺しているのではないか?劇中でアニメ制作を無理やりさせられる人々が描かれるが、現実のアニメーターがマジの奴隷労働なのを知っていると割と笑えない。知識が増えていくと、笑えなくなってしまうことも増えてくるのだ。
 知識が増えていく、というのは映画知識の事も含まれる。あらためて本作を観て思ったのは終盤の展開が「Mr.インクレディブル」と真逆だという事だ。
 
 「Mr.インクレディブル」は、スーパーヒーロー活動禁止法が施行され、力を持て余しながら何とか普通の生活を送ろうとするスーパーヒーロー一家を描いた物語だが、主人公である一家の父、ボブは現役時代ひとりの少年に付きまとわれていた。その少年、バディはボブの熱狂的なファンであったが、ボブは彼を疎ましく思い、常にそっけない態度をとっていた。まあ、ヒーローの現場は死が隣り合わせになっている様な危険な場所だから仕方がないのだが。
 しかし、アクション仮面は熱狂的ファンのしんのすけをどんな時でも邪険にしない。むしろ共闘し、どちらもどちらの力となるのだ。そしてラスボスの最期も真逆で、個人的に本作に軍配があがる。
 その違いは子供と大人の違いなのかもしれない。しんのすけ達子供は悪いことをした人にも許しを与えた。徹底的に断罪しようとする大人を抑えてだ。大人の社会はシビアで一つのミスで永遠となじられる。これはとても陰湿であり、逆に子供は案外カラッとしていて気付いた時にはまた一緒に遊んでいたりする。
 しかし、子供は大人をマネするもの。いつかは純真だったころは過去となるのだ。最近の森友問題などを始め、責任追及大会と化した国会ニュースを見てみると、子供に多大な影響を与えるであろうことは明らかだ。

 クレヨンしんちゃんは大人と子供がしっかりと分けて描かれている作品だと思うが、それはこの作品あたりから顕著になっていく。そして次作はずばりその対立を扱っている。その様な問題を扱っていながら一級品のキッズムービーが完成できるとは……おそるべし!