読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

映画原人の穴

映画を中心とした感想ブログです。ネタバレなしです!

【映画】「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」―異世界の恐怖と希望!―

邦画 アニメ クレヨンしんちゃん 西部劇

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 夕陽のカスカベボーイズ

 

あらすじ
 
 かすかべ防衛隊の5人は鬼ごっこの最中にすでに閉鎖された古い映画館「かすかべ座」に迷い込む。中に入り込んだ一行は何故か映画が上映されている事に気づき、鑑賞する。
 しかし、しんのすけが途中でトイレに行った間に4人の姿は無くなっていた。自分だけ置いて先に帰られたと憤るしんのすけだったが、まだ4人とも家には帰っていないと連絡が入る。しんのすけは家族を連れ(シロ除く)て「かすかべ座」に戻り、捜索を開始するが、上映が続いていた映画に見とれていると何時の間にか映画の世界に入ってしまっていた……

 


おすすめ

 西部劇映画の中に野原一家及びかすかべ防衛隊が迷い込んでしまうというストーリーだ。前年の「ヤキニクロード」でのノンストップどんちゃん騒ぎと比べると重厚な作品となっている。
 今までのどこか憎めない悪役と比べ、今回はまるで往年のマカロニ映画の如き下衆な悪役が登場したり、しんちゃんにも今までとは違うタイプのヒロインとの恋愛(?)が描かれるなど、なかなかの異色作だ。。


感想
 
 映画の世界に入り込んでしまう、といえばシュワちゃん「ラスト・アクション・ヒーロー」が個人的には一番記憶に残っている。これはコメディに徹しており、入り込むだけでなく映画の中のヒーローシュワちゃんが現実にやってきて、映画の中では当たり前のご都合展開が現実では通用しないことに衝撃を受けたりする等のコメディに徹していた。

 映画の世界以外にも、現実からの異世界探訪モノはとても多い。例えば本作と同時期(2004年)に刊行がスタートした「ゼロの使い魔」ラノベ界で最も有名な一般人が異世界に迷い込んでしまう物語である。それに自衛隊などの様な現実のテクノロジーがファンタジーRPGの世界に突如放り込まれるといったものも結構ある(「GATE」やタイムスリップ物の「戦国自衛隊」)。
 これは今や一大ジャンルに発展したグルメ漫画にまで波及し、ごく一般的な普通の日本居酒屋がファンタジーRPGの世界に店舗・店員まとめてトリップするというものまである(『異世界居酒屋「のぶ」』)。
 大抵の作品は日本の実力・魅力を異世界で披露し、異世界人たち畏敬の念を抱かせ、日本の素晴らしさ、凄さを再確認するような「日本万歳」系の作品だと言える。
 
 それに対し、今回の「~夕陽のカスカベボーイズ」に異世界に入り込む、という事をかなり恐怖的に描いている。
 突如放り込まれた荒野の世界から当初は逃げ出そうとするも、徐々にその異世界に順応し終いには元の世界の記憶が消えていく……。しんのすけ達は何時かは全て忘れてしまうかもしれない、ということに強い恐怖を覚えていくのだ。しかしその恐怖すら無くしてしまうかもしれない。
 その描写は絶品で例えば、しんのすけが自ら発案し、アニメ・映画にも幾度となく登場した心強い(?)仲間の「ぶりぶりざえもん」の顔すら描けなくなってしまう、というシーンだ。かすかべ防衛隊や家族と徐々にすれ違っていくさまも痛々しい。

 そうして心が疲れていくしんのすけの救いとなるのが本作のオリジナルヒロイン、つばきちゃんだ。つばきは中学生くらいでおねえさん好きのしんのすけにとってはまだまだ魅力的に映える、つまりひと目惚れをする相手ではない。実際、初登場時にしんのすけはつばきに対してナンパを仕掛けることもしない。
 しかし、徐々に心が通わせる事でしんのすけはつばきの魅力を知り、自分が恋していることに気づく。始めてしんのすけが一目惚れ以外で恋をするのだ。時間をかけた愛だからこそ後半の展開がかなり心に響くわけだな。

 だからといってその様なしんみりした心理描写ばかりに集中した作品ではない。これは結局のところ「クレヨンしんちゃん」映画なのだ。コメディ要素もたっぷりある。それが爆発するのは終盤の戦闘シーンだが、しんのすけのカンチョー連射など、かすかべ防衛隊の頑張りはもちろん、強敵ジャスティスロボのおかしさと不気味さを兼ね揃えた動きも味わい深い。
 
 またオリジナルキャラクターとして同じくかすかべから迷い込んだおじさん、マイクは「マイク水野」こと水野晴郎がモデルとされるが、より強くイメージできるのは「クエンティン・タランティーノ」だろう。タラは映画界に入る前はビデオ屋で大量の映画に囲まれながら過ごし、そこで得た様々な要素を使い、「レザボアドッグス」「パルプフィクション」といった作品をリリースし、一気にメジャーへとのし上がった。 
 さしずめ本作のマイクは「映画監督に成れなかったタランティーノ」と考えてみると言い、西部劇だし。彼の行動はいちいち哀愁を感じさせるのだ。

 本作はヒロインのつばきが可愛い、とか意味深なラストシーンが話題になるが、それだけで構成された作品ではない。沢山の面白どころを抱えた映画ファンの心にもガチで突き刺さる映画となっている。必見だ!!