映画原人の穴

映画を中心とした感想ブログです。ネタバレなしです!

【映画】「座頭市物語」―切れ味抜群!―

座頭市物語

あらすじ

 座頭市勝新太郎)はその名の通り盲人であった(”座頭”とは盲人の階級である)。旅の途中、以前交流を持った下総飯岡の貸元、助五郎(柳永二郎)のもとでやっかいになるが、飯岡は笹川の繁造一家と抗争中であった。
 助五郎は以前見た座頭市の居合切りの凄まじさを利用すればこの抗争も圧倒できると考え、座頭市を引き留めるが……

 


おすすめ

 映画・テレビドラマなどその後何十、何百作と製作された「座頭市」。その名を世界にとどろかせた勝新版の第一作がこれだ。盲目という、殺し合いにおいて最悪のハンデともなる枷を背負いながらも最強であり続ける座頭市は大人気キャラクターとなり、されるまでになった。

ブラインド・フューリー [DVD]


 この第一作の後に製作されたシリーズやドラマも大体楽しめる作品ではあるのだが(特にテレビドラマのクオリティは並の映画を超える)、原点である本作はやはりその中でも極めて面白い。


感想
 
 出来事をただ羅列するだけの映画がなんと多いことか!「ラスト5分のだいどんでんがえし!」とかそんな文句ばかりで、「何が起こったか」ばかりに執着し、「どう描くか」に意識がいっていないような映画だ。そんな作品は映像を見る必要のない作品でテレビで他の事でもしながら見るべき作品だ。というかセリフだけ聞いておけばよい。
 映画館は映画を観ることに特化した作りになっている。1~2時間程度スクリーンにくぎ付けにしてしまう映画とはどんなものか、例えばこの「座頭市物語」は何処で観ても釘づけにされてしまう映画だ。

 ストーリーは極めてシンプルで、座頭市がヤクザ同士の抗争に巻き込まれ、唯一親しくなった男が敵側の刺客だった、それだけだ。
 しかも、人間関係で昔からの因縁があるとか、そんなよくあるテコ入れもない。たまたま遭遇した人間たちによる数日の物語なのだ。

 しかし、それだけ、と感じさせない面白さで鑑賞中ずっと魅了される。例えば、それは座頭市というキャラクターの魅力だ。
 セリフ一つとっても、マネしたくなるほどカッコいい。盲目の座頭市からカネをだまし取ろうとする輩に対する喝や、暗闇での戦闘を始める前の一言「検討つけて切ってきな……」等たくさんあるが、一番カッコいいのは盲人をあざける健常者に対する啖呵だ。
 差別などを描く際、最近では表現を規制することが当たり前となっているが、それは結局のところ「臭い物に蓋をする」だけであり、問題点の本質を隠すことになりかねない。

 本作はその様な規制がまだ全然なかった頃に製作された。であるから盲人の事は基本的には「メクラ」という言葉で表現される。一般的に差別用語とされるものには二つの側面がある。
 ひとつはただの「呼び名」だ。日常的に使われてきた呼び名が差別用語に指定されることは多い。というか殆どかもしれない。何故そうなってしまうのかというと、日常的に使われるという事は下に見ると時、侮蔑的な感情を持った時も使うからだ。そっちがクローズアップされて差別用語と成るわけだ。悪い側面を強調しているということだ。
 もう一つは当事者同士が自分たちの事を自称する際に使うことだ。現代でいえば、黒人の事を「ニガ―」と呼ぶのは差別用語であるが、黒人同士では(特にギャング)自分たちの事を「ニガ―」という。ラップでもよく聞くでしょ?座頭市だって自分の事を「メクラ」と呼ぶ。こっちは今でも使ったってかまわない。

 或る言葉を使ってもいい人とダメな人がいるというのはよく考えると不思議だ。そもそも言葉というのは曖昧で「メクラ」の頭に”い”を足すと「イメクラ」となる。

 結局のところ、どんな言葉でも差別に成りかねないということであり、座頭市が言うように『別にメクラだっていうのは構わない、それは事実だ。しかし、メクラだからとか、メクラの癖に、ってメクラの事を馬鹿にするのは我慢がならねぇ』という事なのだ。
 つまり、その言葉を使ったというだけでヤリ玉に挙げるのは意味不明だし、正義(笑)の道楽でしかない。

 その様な力強い言葉を言えるキャラクター性が全編を通してほとばしっているのだ。もちろん、それだけでなく肝心の居合切りも抜群だ。
 そして切れ味が鋭いのは仕込み刀だけではない。この座頭市物語は実際のところ殺陣は終盤のみでほとんどは、座頭市と周りの人々の交流で占められる。
 とくに座頭市の世話を任されたやくざ者の蓼吉(南道郎)とその妹おたま(万里昌代)とのかかわりが多いのだが、どうしようもないダメ男の蓼吉に対し、おたまはしっかりもので本作のヒロインとなり、続編にも登場する。
 
 そして座頭市が釣りで親しくなる繁造側の剣客、平手造酒(天地茂)との関係もすごくいい。ただ同じ時を過ごし、甘えのない友情を持つ。それが最後の決戦につながるのだから、たまらないのだ。

 

ブラインド・フューリー [DVD]

ブラインド・フューリー [DVD]