映画原人の穴

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【読書】「プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年」―生まれ変わるために―

プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

 

あらすじ

 カナダにある刑務所。そこでは定期的に囚人達の読書会が開かれる。一人一人がしっかりと本読み、感じたこと考えたことを伝えあい、討論する。何時しか、彼らは本に親しむようになり、本を通して自分の人生を見つめなおす……

 


おすすめ
 
 なぜ人は本を読むのか……。答えがここにある!


感想

 刑務所って必要なのか?と思う時がある。ただ犯罪者を閉じ込めておく施設に何の意味がある。外界から遮断しておけば皆自分の罪を反省して、勤め終わったら誰もが認める真っ当な人間になるのか?

 人が犯罪行為を控える理由は捕まった場合のリスクを恐れてのことだ。社会的地位の崩落、長い刑務所生活、親族友人関係の崩壊……様々だ。しかし、それを恐れるのは、壊したくない自分の生活がある人だ。もともとの人生がどん底の人であったり、犯罪行為以外の飯ダネを全く持ち合わせていない人だっている。
 そんな人たちにとって、刑務所生活というのは人生のルーチンの一つにしか過ぎず、何度も出たり入ったりしてしまう。なんたって刑務所に入っていれば、飢え死や凍死なんて心配もない。DVからだって逃げ出せる場所なのだ。

 であるから、巷でいう「より重罰にして犯罪を減らそう!」みたいな意見は、ある一定以上の生活水準の人にしか通用しない理論なのだ。社会保障でそれ以下の人に色々支援してはいるが、それが少しでも途切れれば、何が起こるかわからない。腹がへれば誰だってイライラするからな。

 何度も刑務所に入ってしまうような人は、大抵子供の頃の環境がよくない。見習うべきまともな人間が周りにいなかったからだ。周りの大人たちが犯罪行為→刑務所→出所→犯罪行為→刑務所のルーチンをしているから、それを見習ってしまったのだ。環境が人を作るという事だ。分かりやすい例でいえば、お金持ちの私立高エスカレーターと田舎のマイルドヤンキーだろう。一見何の関連もない二つであるが。システムとしては一緒だと考えられる。
 どちらもある程度隔離された環境に閉じこもり、皆が同じように育てられるからだ。どちらにしてもその中のコミュニティで完結できるのは変わらない。
 それでうまくやっていけるなら別にいいが、犯罪者を量産してしまう環境はやはり良くない。刑務所という外部の騒音が届きにくい環境は、今までの教育から抜け出す機会を提供できる。

 そこで何をすべきか、「時計仕掛けのオレンジ」の様な情操教育をするか、そんな必要はない!ただ本を読み、それについて語り合えばいいのだ。
 「読書なんて意味あるの?」という議論がある。なるほど、たしかに本を読めば就職が簡単に決まるとか、人生が何もかもうまくいくなんてことはない。
 この本に登場するピーター(囚人)の言葉を借りるとすれば「文学は自分の内側にあるものを高めてくれる」ものであるのだ。それは結果がすぐわかる実学ではないのだが、やはり必要なものだ。
 
 『文学』とはなにか、を考えてみると。こう考え付く――「それぞれの時代で物事を考え抜いた偉人たちの結晶」
 そこらへんの大人の話より何倍も為になるし、それを読んで自分では納得いかなかったり、よく理解できなかったとしても、同じ本を共有する人とそれについて話し合えば、それは素晴らしい経験・知識となる。

 出版業界に求められているものは即効性のあるライフハック本だ。例えば部屋の片づけとか、お得情報だ。しかし、そんなものばかり読むというのはかなり貧弱な読書であると言える。つまりそれらは小手先のテクニックでしかなく、深く考え抜く機会を与えない。
 やはりコリンズ・ベイの囚人たちに与えられた課題図書(「怒りの葡萄」、「サラエバのチェリスト」等)の様な本を読むことが真に読書と言えるのだろう。

 そしてその様な読書会は何も刑務所だけで行われているわけではなく、図書館などで企画されていることが多い。一人で読むよりもよっぽど有意義な経験となる。思えば、高校生の時まで国語は退屈だと思っていたが、ある一人の教師の現代国語だけは楽しみにしていた。それはその先生が生徒によく、読書会の様な問いかけをしていたからだ。他の教師は皆、ベルトコンベアの様に意味だとか何とかを解説するのみだったのに対し!

 本を読んで中身を取り込むだけでなく、それを自身の言葉でアウトプットする。その体験は自分が変わることを如実に感じることが出来る。だからこそ、今まで読書経験がなかったであろう囚人たちも夢中で読書に打ち込んだのだろう。
 

 本の虫になれば、いつしか美しい蝶となって羽ばたけるかも!

 

プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年