映画原人の穴

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【映画】「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」―過去に縛り付けられたオールドタイプから脱却せよ!―

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲

 

あらすじ

 「20世紀博」というテーマパークが春日部に作られた。そこには20世紀の懐かしいアトラクションが満載で野原ひろし・みさえ含むすべての大人が夢中になり、しんのすけ等の子供たちは置いてけぼりだった。
 ある日、テレビで「20世紀博からの大事なお知らせ」が放送される。すると大人たちの様子は様変わりし、何もせずに子供達も無視するようになり、翌日に20世紀博行きのトラックに子供を置いて乗り込んでしまう。
 町は小学生以下の子どもたちばかりとなるが、直ぐに「20世紀博」による子供狩りが始まる。しんのすけ達”かすかべ防衛隊”はそれから逃げ出し、大人たちをもとに戻そうと奔走するが……

 


おすすめ

 クレヨンしんちゃん映画で最も評価の高い作品だ。それは本来幼児向けに作られていた「クレしん」が大人も楽しめる作品として認められたからだ。
 そもそも「クレヨンしんちゃん」といえば「子供に見せたくないテレビ番組」(PTA調べ)の上位に位置し続けていた作品であり、海外展開の際は下品シーンのカットはもちろん、年齢制限がついたり、抗議が殺到し放映中止の憂き目に遭う事だって珍しくなかった作品なのだ。
 それが原恵一が監督・脚本を担当した本作と次作の「戦国大合戦」により少し国内でのクレしんに対する評価が変わってきて、今ではむしろ好意的な大人も増え始めている。それは単純に「オモシロいから」という理由の他に、大人たちの「懐かしい」という感覚も影響しており、それは実は本作に大きく関わってくるものなのだ。


感想

 懐かしいもの、に人は魅かれるもの。それは仕方のないことだ。思い出は常に美しく補正され、そこに結び付くものはなんでも愛おしくなる。本作は21世紀初のクレヨンしんちゃんであり、20世紀が過去のものとなった最初の作品だ。大人たちは既に通り過ぎたその時代に未だ執着しているのだ。
 それは現実の21世紀が自分たちが少年の頃思い描いていたものとだいぶ異なるからだ。

 20世紀に夢みられていた21世紀は大阪万博や科学漫画雑誌で描かれていた「夢にあふれた世界」だ。しかし、現実の21世紀は20世紀博を作り出したケンが言ったように『溢れているのは汚いカネと燃えないゴミ』だけだ。20世紀から問題になっているものは今もまだ残り、更なる問題も次々と溢れ返しているのだ。
 
 2000年前後の様子を見てみると如何に大人たちが未来に絶望していたかがわかる。バブルがはじけた後、経済が復活する様子は全くなく、さらに凶悪な少年犯罪がテレビニュースを賑わせていた。そんなときに登場した深作欣二監督作品「バトル・ロワイアル」は大人たちにとって大変なショックとなった。

 この映画と「オトナ帝国」は同質のものなのかもしれない。大人の都合で割を食うのは何時も子供だからだ。希望ある未来なんて今やもうない。

 でも浸る思い出を十分に持たず、未来を生きるしかない子供たちはそれではダメなのだ。かすかべ防衛隊は未来を守るため大人たちに立ち向かう!

 これは2001年の映画だ。その時点で過去に縋ってばかりいてはいけないという強烈なメッセージが発せられた。しかし、その後も懐かしの給食食玩シリーズや、過去にヒットした作品のリメイク、リブートや過去のノスタルジーを呼び起こすが相次ぎ、テレビ番組でも「あの人は今」や懐かし歌謡曲の様なものが軒を連ねる。youtubeなんて使えば、懐かしい映像を1年中見続けたって終わらないコンテンツ量を誇る。
 というか2001年の映画を観て当時を思い出している自分もその一員なのだ。まだ20前半なのに!「クレしん」を認める大人が増えたのは単純に子供の頃からクレしんを見ていた世代が大人になったからだ。
 実は本作そのものにも「懐かしい」要素があり、例えば本作はセル画とフィルムを用いて制作された最後の『クレしん映画』であり、その後はすべてデジタル彩色に置き換わった。アナログ彩色は当時それに親しんだ人からすれば涙が出るほど味わい深いのだ。

 考えてみると、「懐かしい」という感情は思いのほか大きな要素であるようだ。結局のところ、全ては「思い出補正」に勝てないのかもしれない。未来は不安だらけで考えれば考えるほど疲弊するのに対し、過去は既に完了していて様々な補強を加えれば何べんも楽しめるからだ。
 でもやっぱり未来を生きていかなければいけないのだ、我々は。辛くて苦しい『今』でも必死に耐え抜いて生き抜けば立派な「思い出」になるはずだ。ひろしがそれに気づくシーンは格別に泣ける。

 その後は「今」を生きる家族のモーレツな共闘が始まる。いまさらネタバレも何もないが、まあいちいち書く必要はないだろう!

 

 

 

 


「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」 予告編