映画原人の穴

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「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」―全ての要素の切り込みが浅い―

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あらすじ
 ニュージャージー州オースティン群。ここで優秀な警察官として20年以上仕事に打ち込んできたローレル(ジュリアン・ムーア)は、自身がレズビアンであることを周囲に隠して過ごしていた。彼女はステイシー(エレン・ペイジ)という若い女と恋仲になり、同性パートナー関係を結んで一軒家で同居を始めるが、幸せの絶頂も束の間、自身の体が末期がんに侵されていたことが明らかになる。

 

 

おすすめ
 生まれて初めて試写会というものに行ってきた。上映前にトークショーがあり、当たり障りのない八方美人なつまらない話にイラついた後に観たわけだが、それを忘れるほどには楽しめた(ハードルが下がった?)。

感想
 LGBTが社会で浸透したのもつかの間、ジョニデの娘が公言したことで話題になった”セクシャルフルイディティ”という新しい概念が登場し、フリーセックス(ジェンダーフリー)もここまで来たかという今日この頃。
 とはいえ、社会的な法・規則はまだそれを十分に捉えられているとは言えない。言葉ばかり先行しても意味はないというわけだ。LGBTでゴチャついている時期に、また新しいのが出てきたら人々は考えるのをやめてしまうのではないか?というかそれぞれの言葉の線引きが曖昧すぎる。
 この映画は同性パートナーが遺族年金を享受できないのはおかしい!という話だ。つまり、愛し合っているのは”普通”の異性間パートナーと変わらない。であるのに同性であるというだけで社会保障に制約がかかるのは差別だ。LGBTの人々はなにも自分たちを優遇してほしいとは思っていない。”普通”に扱ってほしいのだ。
 個人的に映画で一番ぐっと来たのは二人が正式に役所で同性パートナー制度を正式に結ぶシーンだ。完全なマイノリティであり、公言することは躊躇われる時代、地域であるが、それでも……という感情がセリフはないが伝わってくる。

 とはいえ映画としてはあまり面白いとは思えなかった。内容が差別をテーマにした重要な事実だから、それが持つ求心力はある。しかしそれだけだ。イーストウッド監督の「ハドソン川の奇跡」は結末がわかっているのに心臓が締め付けられる緊迫感、それは正しい行為のはずなのに社会的な責任が厳しく問われ、自分と周囲の溝がどんどん拡大していく居心地の悪さ、そしてそれを自身の信念で晴らしていく爽快さが見事に描かれていた。
 今回のハンズオブラヴは根本的にはそれと似た要素を持っている、が描き方は全く異なる。個人的には観ている間中、「でも最終的にはローレル側が勝つんでしょ」と冷めた眼をしていた。つまり悪いやつ側は徹底的に差別的な保守おじさんで、良いやつ側は人種も性別も年齢も様々で、「広い世界はこっちの動きに乗っている!保守的なお前らが間違っている!」とその組織構成が既に主張している。つまり映画の中においても勝敗は最初から明らかなのだ。
 またスティーヴ・カレルユダヤ人でゲイの活動家として、そしてギャグ要員として登場するが、昔ながらの安直なゲイキャラクターに過ぎない(つまりノンケでも構わず言い寄る、妙に図々しい……など)。LGBTをテーマにした作品なのにそれでいいのか?
 
 この映画で一番頑張っていたのは”ストレートで優秀なアングロサクソンの男”ことデイン・ウェルズだ。それは演じたマイケル・シャノンの演技も劇中一番だし、役柄としても最初から最後まで二人を支え、冷静に忠告や裏工作(最初の新聞や議員とか)をし、熱い心で訴えることで皆の心を動かす、と一番の活躍をする。

 少し前に「かながわ女性の活躍応援団」という団体のポスターが男だらけすぎる!と話題になったが、映画を見た後はそのポスターを見たときと同じ気持ちになった。結局社会の要は”おっさん”たちで、なにかを成すということイコールそのおっさんたちに認めたもらう、という図式であるという事だ。革命はいまだ遠い・・・・・

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↑「かながわ女性の活躍応援団」という団体

 

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「ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気」予告編 (90秒)


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