映画原人の穴

映画を中心とした感想ブログです。ネタバレなしです!

「ハドソン川の奇跡」は熱湯シャワーだ!

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あらすじ
 2009年冬、極寒のNYから155名を乗せた旅客機が飛び立つが直後に全エンジンが停止した。
 通常では最寄りの空港に着陸するべきなのだが機長のサリー(トム・ハンクス)はそれを不可能と判断し、ハドソン川に着水した。
 結果として155名全員が無事に生還し、事故は「ハドソン川の奇跡」と讃えられるが、その後の調査において”空港に着陸する猶予はあった”という結果が出た事でサリーは厳しい追及を受けることになる……

 

 

おすすめ
 実際に起きた旅客機事故を監督クリント・イーストウッド、主演トム・ハンクスで映画化。結末は分かっているはずなのに96分の間、一時の間も手の力を緩めることができない。現実の臨場感をここまで映画に落とし込んだ作品はなかなか存在しない。覚悟してみよ!

感想
 この映画を見た後、知人に「ハドソン川の奇跡、ちょー面白ぇ!」と言ったら、嘘つくな絶対つまらん、と返ってきた。まあしょうがないことだ。というのも今まで幾つもの”実話お涙ちょうだい物語”が製作され、そのどれもが……どうでもいい作品だった(ハドソン川の奇跡ってタイトルも”バンクーバーの朝日”と少し似ているし)。

 しかしほかの作品と一緒にされたら困る!何故なら同じ感動モノでも、その毛色は全く違うのだ。というか、感情を揺り動かさない映画はすべて駄作であるわけで。感動モノとか言っている時点で「映画はとりあえず泣ければいいんでしょ」という薄っぺらい考えが透けて見えるのだ、許さん!

 事故や事件,悲劇は被害の規模がどうであれ現実には起こって欲しくないものだ。しかし、それが起きるとエンターテインメントへの素晴らしい栄養となる。実際にこの映画もノンフィクションであるし、他にもデンゼル・ワシントンの「フライト」はこの事故に大きな影響を受けているだろう。911,311,イラク戦争、癌……結局どんな作品でも現実が元となっている(なっていないのはカラッポだ)。

 人は日々の出来事を通して自分を見詰め直すのだ。映画というのはその”見詰め直し”の結晶を大公開することである。そこで重要なのは善悪や正しさを見出せるかであり、例えあなたが映画で掲示されたそれに同意できないとしても、改めて自分(の価値観)を見詰め直す機会になるのだ。その意味で、映画は現実の疑似体験なのだ。よって、それを無視した作品はどうでもいい路傍の石コロとなる。

 とはいえ「僕はこう思います!」と演説大会になっている映画はつまらない。その点この映画はそうはなっていない、むしろセリフではほとんど感情を吐露しない。本編は一点に集中した作りになっており、補完としてのエンドロールはノンフィクションの強みを最大限に生かしたものとなっている。現実に勝るものはないのだ。
 
 元となった”USエアウェイズ1549便不時着水事故”は911イラク戦争、そしてリーマンショックで疲弊していたアメリカ人にとって久々の良いニュースとなり、皆が自分のことのように喜んだ。自国の人がノーベル賞を取った事を自分のことのように喜ぶのと一緒だ。一時の間、自尊心が高めてくれる消費財だ。

 私は実際の”ハドソン川の奇跡”のその後は知らなかった。奇跡の担い手はその後ずっと苦しんでいたのだ。周囲の反応と自分の心の間に徐々に隙間ができていく。周囲のすべてに疑心暗鬼になり、常にやり玉に挙げられているように感じていく。全身をねっとりとした嫌な汗が覆っていくのだ。

 しかし最後にはプロフェッショナルな男の意地が勝つ。その時の嫌な汗をすべて洗い流す熱いシャワーの様な爽快さよ!観終わった後、急いでトイレに行き、手の汗を綺麗に洗い流した。

 

機長、究極の決断 (静山社文庫)

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ハドソン川の奇跡

ハドソン川の奇跡

 
Sully

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映画『ハドソン川の奇跡』予告編