映画原人の穴

映画を中心とした感想ブログです。ネタバレなしです!

「ジャッジ!」―消費者よ、テクニックに騙されちゃいけない―

ジャッジ! [DVD]

あらすじ
 大手広告代理店に勤める太田喜一郎(妻夫木聡)は上司の大滝一郎(豊川悦司)に自身の代わりにサンタモニカ国際広告祭で審査員を務めるよう命令される。それは得意先の社長のバカ息子が作った低レベルのCMをその広告祭で入賞させなければいけない、という会社の厳命を押し付けられたということだった。ホモに間違われないために同僚の大田ひかり(北川景子)が妻を装って現地に同行するが……

 

 

おすすめ
 華やかな広告業界の裏で起こるドタバタを描いたコメディであるが、この映画の構成自体がその広告というものの本質を表している。恐ろしい!

感想
 「ファイトクラブ」においてタイラーダーデンは財布の中身や芸能ゴシップ、ブランド品の事ばかり気にする物質主義の消費者たちを笑い飛ばした(お前らは歌って踊るこの世のクズだ!)。そしてそれを演じたブラッド・ピット本人が芸能ゴシップを賑わせ,ブランド品の広告に出て、大量のギャラを受け取っている(むしろ貰い過ぎて財布の中身は気にしていないだろう)という現実が映画を観て興奮した我々にバケツ水をぶちかけるというオチになっていた。
 この「ジャッジ!」もその様に受け取ることは”可”です。CMは最新のテクノロジーやフレッシュなアイデアを詰め込み、より商品を視聴者の記憶に焼き付け、魅力的に思わせ、消費行動に走らせることを目的とする。15秒か30秒の短い時間でそれを実現するには直感に訴える必要があるのだ。その為には何かを誇張したり、今話題の何かを登場させたりとわかりやすさも重要となる。
 劇中には昨今のオネエブームの流れを汲み、タイ王国のオネエが登場するが、これが典型的なそれでありとてもわかりやすい、まるで男ならだれでもイケるわ!と言わんばかりのステレオタイプだ。また100分程度の上映時間をフルに生かしたテンポが早めの編集や前半で登場したどうでもいい様な行動が後々活きてきたりする映画的な伏線回収もシンプルでわかりやすくて映画の流れに乗りやすい。ちょっとした暇つぶしに鑑賞した人々はところどころ笑って、気分よく劇場を後にしたことだろう。
 しかし一寸立ち止まって考えてみるとそれは様々な嫌なところに蓋をした事で生じる面白さであったことに気付く。そもそも”お笑い”というジャンルそのものが無知とか偏見を利用している側面があるからしょうがないことだ。ステレオタイプのオカマもそうだし、きつねそばを知らない外国人にテキトーなウソを植え付けて世界的に盛り上がるくだりもそうだ。

 ただ映像が好きなだけでは広告マンとしては大成しない。それはダメ広告マンの妻夫木が純粋にCMというコンテンツが好き(とはいえ序盤のCM製作の態度はテキトーすぎるが)なのと対照的にデキル女としての北川景子がデータ分析に基づく競馬を趣味とする設定からも窺える。マーケティング至上主義なのだ。
 なにも考えずに楽しめる映画こそ、しっかり考えることで世の中の真実に気付くことがある。その点でこの映画はとってもためになった。

 

ジャッジ!

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