映画原人の穴

映画を中心とした感想ブログです。ネタバレなしです!

「君の名は。」これは正統派ファンタジーだ!

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あらすじ

 東京都心で生活する男子高校生の瀧と飛騨の田舎に住む女子高生の三葉は不定期に心が入れ替わってしまう不思議な状況に陥る。戸惑いながらもその状況を楽しむようになっていくが……

 感想

 監督である新海誠の作品は「秒速5センチメートル」のみ鑑賞済みだ。それは個人的には不満の残った作品であり、他の作品も似たような感じだったから、観るのを控えていたのだ。で、この「君の名は。」もスル―しようと思っていたのだが、縁あって観ることになった。

 結果として面白かった、が、同時にアニメと実写の違いを改めて実感した。今まで「アニメだから」という事で様々なごまかしが行われてきた。それはキャラクターの容姿から、町並みなどの背景、時間、設定やストーリー展開に至るまで様々だが、それらはアニメの特権であると同時にコンプレックスでもあった。

 アニメや漫画のキャラクター達は、家族の存在が希薄な場合が多い。理由は簡単で面倒だからだ。特に学生というものは何だかんだ言って保護者の庇護下にあるわけだが、そこをツッコんでいくとキリがなくなってしまう。細田守はその”家族”をテーマにしているわけだが……

 「君の名は。」は家族問題のようなものも存在するが、程度でいえば前フリに過ぎない。しかし、「君の名は。」においてそれはどうでもよいのだ。

 物語は瀧と三葉の二人を通して進むが、その役割はしっかりと分担されている。三葉の住む糸守は閉塞感のある田舎町で、親、そして煩わしい家業に嫌気がさして東京に脱出したがっている。対して、東京都心で生活する瀧は、家族はほとんどいないようなもので学校とバイトにおいて、良い友人と美人の先輩に囲まれて過ごしている。

 その二人の心が入れ替わることで三葉は憧れの東京生活を、瀧は何もない田舎生活を不定期で過ごすようになる。どちらも最初は戸惑うが、少しづつ馴れていき、それぞれがスマホ等に伝言を残すことでやり取りを交わすようになる。その過程はとても面白いのだが、反面、話が進むたびに現実感が喪失していく。

 つまり、設定はとてもリアルで三葉やその友人たちのやるせなさや苛立ちに共感していたのだが、その後の展開が完全にアニメの特権を駆使したものだったからだ。リアルだなんだといったって根本はファンタジーでしかない。その点ではそこらへんのよくある邦画と変わりない。ではなぜ、こんなにヒットし、面白いと思えるのか。

 それは世界観をうまく構築し、物語の展開にしっかりと活かしていたからだ。これは「アバター」と似たものがあるとみた。アバターは架空の惑星、パンドラを舞台にした映画だが、パンドラという緻密に作りこまれた世界で、物語はその世界と3時間弱の上映時間を活かしきった展開をみせた。結果としてまるで実在するかのようなパンドラにすっかり魅了され、鑑賞後の目前に広がる現実を認められなくなるアバターショックなんてものも現れた。

 パンドラや糸守と違い「君の名は。」に登場する東京は実在する。ポスターにも使われた印象的な階段も実際にあって、早速その世界に魅せられたファンたちが押しかけているのだが、そこに映画の景色は存在しない。新海誠の特徴は「リアル」ではなく「綺麗」だ。大友克洋が日本の汚さや、間抜け面を抜き出すのが上手かったのは逆であり、新海誠は現実の景色・人・文化を美しく抜き出すのが上手く、もはや全編「奇跡の一枚」なのだ。例えば、私は本物の口噛み酒を見たことがあるが、それを噛んでいたのは皺だらけの太ったおばあちゃんだった。現実とはそんなものだ。

 そういう現実を美しくデフォルメして作り上げられた「君の名は。」は痛みを伴わない居心地の良い世界を作り上げた。その究極ともいえるのが終盤の展開だ。ポスト311の映画であんな展開っていうのはあまりにも非現実的すぎる!のだが、作品の中の世界がうまく構成されているので誰もあまり気づかないのだ!!

 

RADWIMPSは久々に見かけたけどいい仕事をしたぞ!