映画原人の穴

映画を中心とした感想ブログです。ネタバレなしです!

「要塞警察」は何気ない日常ものだった!?

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あらすじ

 娘を殺したギャングに復しゅうを果たした男が逆にギャングに追われ、引っ越し作業中で人も物資も殆どない警察署に逃げ込んできた。ギャングはそこを包囲し署内の人間を皆殺しにすべく、消音銃を使った静かな侵攻を開始する……!

 感想

 ①低予算でも見事な世界観

 この映画はジョン・カーペンターの2つ目の監督作品で1976年に製作された。カーペンターは低予算映画の雄として知られ、この作品は10万ドルで作られたそうだ。ちなみに前年の「カッコーの巣の上で」の製作費は300万ドルだ。

 とはいえ作品の出来は素晴らしく、巨大なセットを使わずともいかにも治安の悪そうで誰も助けに来なさそうな絶望的な街並みを描くことに成功している。撮影裏話はDVDに収録された監督本人のオーディオコメンタリーで詳しく聞くことが出来るので是非聴いてみてほしい。

 ②復しゅうの連鎖と敵同士の共闘

  この作品の根幹は復しゅうだ。冒頭で少年ギャング6人(大学生が演じた)が警察に射殺され、復しゅうを誓う仲間のギャングたち。そのギャングに娘(キム・リチャーズ)を殺され、追いかけ復しゅうを果たす父親(メロドラマ俳優らしく弱々しさが際立つ)。そして彼を追いかけ、警察署を包囲し、警察と父親2つに対する復しゅうを同時に果たそうとするギャング。

 また、この警察署にはある理由で移送中の囚人たちもいるのだが、その一人のナポレオン・ウィルソン(ダーウィン・ジョストン)も囚人いびりをする刑務所長にプチ復しゅうを果たしている。

 マカロニウエスタンは復しゅうがテーマになるのだが、実はこの映画の下敷きも西部劇だ。それは監督ハワード・ホークス、主演ジョン・ウェインの「リオ・ブラボー」だ。こちらはハリウッドウエスタンだがカーペンターはこれが大好きで「要塞警察」は「リオ・ブラボー」の舞台を現代のロサンゼルスに移し替えただけだと監督本人が言っていた。

 

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 「要塞警察」のスタッフクレジットには編集、ジョン・T・チャンスとあるが実はこの名前は「リオ・ブラボー」におけるジョン・ウェインの役名であり、実際に編集しているのは監督本人だ。カーペンターは本作において監督、脚本、編集、音楽を手掛けている。

 

 また復しゅうだけでなく、警察と囚人が互いが助かるために銃をとって共闘するアツい展開もある。そこで余計な逡巡がなく皆キビキビ動くのは観ていて気持ちがいい。この映画はドロドロしたところがなく、カラッとしているので変に身構えなくともいいですぞ。

 

 ③狂気を当たり前のように描く

  今の日本ではいわゆる「日常系」が二次三次問わず流行っている。物語に大きなヤマやオチ、しまいにはイミすらなくても彼らの何の変哲もない日々を描くことで「本当の幸せは実はすぐそこにあるんやでぇ~」とほんわかさせてくれるものだ(もちろん「アメリカン・ティーン」のようにほんわかだけではないものもあるが)。

 有名どころでは「けいおん」、失敗作として木村祐一監督作「ワラライフ!!」がある。しかし世の中には非日常を当たり前の日常のように描いてしまうやつらがいる。

 

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 普通の映画では人が持ぬ時、それはもう哀愁漂うメロディーをバックに、情感たっぷりに悲しむキャラクターが映るが、本作、そして「マッドマックス」等では実にあっさり死ぬ。死が隣り合わせの舞台では死が軽いものになっているという事だろうか。

 

 

 

 例えば福島原発を考えてみると東北や北関東など福島に近い場所より、もっと遠い地域の方が過剰に反応した。人間というのは自身から遠い物事には関心を示さないと言うが、その分自身の勝手なイメージが増長されやすく妙な偏見も持ちやすい。

 死も実は思ったより大層なものではないのかもしれない。ジョージ・ミラーは医者として働いていた時にそれを悟ったのだろう。カーペンターは……ただの省エネ演出?だとしてもそれで上手くいっているなら良いじゃない!何気ない日常の、何気ない殺し合いを描いているのだ。そこに大きなヤマはないが、常に気味の悪い緊張感が作品全体を覆っている。

 特にギャング団は全く人間性が深堀りされず、ただただ血肉を求めうごめくゾンビの様に描かれる。中でも気味が悪いのはフランク・ダブルデイが演じた娘を殺すギャングで彼は感情が全くない殺人マシーンを見事に演じている。彼は後にカーペンターが撮った「ニューヨーク1997」にも出演し、また不気味な役を演じている。

 

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 そして囚人の一人、ウェルズを演じたトニー・バートンが今年の2月25日に亡くなられた。彼の一番の出世役は「ロッキー」でアポロのトレーナーを演じたことだ。追悼の意を込めて「要塞警察」と「ロッキーシリーズ」を観直そうじゃないか(シャイニングもね!)。

 

 

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